スプレッドとは?買った瞬間から損益がマイナスになる理由

買いボタンを押したばかりなのに、含み損益がもうマイナスになっている。

価格はほとんど動いていないのに、買い間違えたのでしょうか?

買い間違えたのではなく、スプレッドです。

これは MASQuant「トレーディングアカデミー・初心者実践編」の第5回です。これまでの4回は、発注前に計算すべきことを扱ってきました:1ロットはいくらか、ロット数の計算、レバレッジ、損切りの置き場所。今回扱うのは、発注ボタンを押したその瞬間にすでに発生しているコストです。

結論から

エントリー直後にマイナスなのは普通です。それはスプレッドであって、買い間違いではありません。

発注前にスプレッドを確認し、損切り幅や利益目標と比べてみましょう。

すべての気配値には、実は2つの価格がある

取引ソフトに表示される気配値には、実は同時に2つの価格があります:

価格 英語表記 使う場面
買値 Ask あなたが買うときの約定価格(高いほう)
売値 Bid あなたが売るときの約定価格(低いほう)

この2つの価格の差をスプレッド(Spread)と呼びます。

計算しやすい例(説明用の整数であり、相場データではありません):

買値(Ask)1002
売値(Bid)1000
スプレッド = 1002 − 1000 = 2ポイント

「1ポイント」がどれだけの値動きを表すかは商品の仕様によって異なり、確認方法は後で説明します。ここではまず整数で考え方を説明します。

名前の取り違えに注意

ここでの「買値」「売値」は、あなたが発注する側から見た言葉です。買うときは買値、売るときは売値を使います。

株の板情報に慣れている人は注意してください。板の「買い気配」は、他の人が買いたいと出している価格です。あなたがすぐに売るなら、約定するのはむしろこの価格です。同じ価格でも、注文を出した人の側から見れば「買い」、あなたの側から見れば「売り」になります。

呼び方はプラットフォームによって異なるので、英語で覚えるのが最も確実です:Ask はあなたが買う価格、Bid はあなたが売る価格。

なぜエントリーした瞬間にマイナスなのか

買いポジション:買値で入り、売値で決済する

買値 1002 で買ったとします。すぐに決済するなら「売る」ことになるので、売値 1000 でしか売れません:

買い(買値):1002
すぐに決済(売値):1000
損益:1000 − 1002 = −2ポイント

そのため、プラットフォームは買いポジションの含み損益を、通常現在の売値で計算します。今この瞬間に実際に決済できる価格だからです。価格がまったく動いていなくても、最初から2ポイント少ない状態です。

損益ゼロに戻すには、売値がエントリー価格の 1002 まで上がる必要があります。スプレッドが変わらなければ、気配値全体がまず2ポイント上に動く必要があるということです。価格がこの2ポイントを超えて初めて、利益が出始めます。

売りポジション:ちょうど逆

売りは先に売るので、売値 1000 でエントリーし、決済は買い戻しになるので買値 1002 を使います。こちらも最初から −2ポイントで、買値が 1000 まで下がって初めて損益ゼロになります。

エントリー 決済 含み損益の基準
買いポジション(先に買う) 買値 Ask 売値 Bid 売値 Bid
売りポジション(先に売る) 売値 Bid 買値 Ask 買値 Ask
ノートの手描きイラスト:上のオレンジの線が買値 1002、下の青い線が売値 1000 で、2本の線の間がスプレッドとして塗られている。買値の線には「買い」と書かれ、矢印が売値の線まで下を指し、横に「すぐ決済:1000」と書かれている

これは、最終的に儲かっても損しても、すべての取引で支払うコストです。

スプレッドは取引コストのひとつ。ただしすべてではない

スプレッドは口座に別途引き落としとして表示されるわけではなく、エントリーと決済の価格に直接反映されます。よくある取引コストには、性質の異なるものがあと2つあります:

コスト いつ発生するか 計算方法
スプレッド すべての取引で、エントリーした瞬間 買値と売値の差。約定価格に含まれる
取引手数料(コミッション) 一部の口座タイプのみ別途発生 通常は取引ロット数または取引金額で計算
スワップポイント(Swap) ポジションがプラットフォームの毎日の決済時刻をまたいだとき 商品、売買方向、保有日数による。支払いの場合も受け取りの場合もある

発生するかどうか、どう計算するかは、プラットフォーム、商品、口座タイプによって異なります。コストを比較するときは3つを合わせて見ましょう。手数料が無料でも取引コストがないわけではなく、スプレッドは存在します。

また、スリッページもスプレッドとは別物です。スリッページとは、実際の約定価格が発注時の価格と異なることで、相場が急変したときによく起こります。コストを増やすこともありますが、別の話です。

スプレッドは固定ではない

2ポイントはあくまで例です。実際のスプレッドは相場とともに変化し、よく広がるのは次のようなときです:

  1. 重要指標の発表前後:政策金利の発表や雇用統計など。相場が不透明になり、近い価格で提示される量が減るため、買値と売値が離れやすく、スプレッドが一気に数倍に広がることがあります。
  2. 取引が閑散な時間帯:参加者も注文も少ないため、買値と売値の差が自然と広がります。
  3. 取引開始・終了の前後:商品の取引開始直後や終了間際、毎日の決済・日付変更の前後、週末明けの取引再開時は、気配値が不安定になりがちです。

スプレッドの拡大は、すでに保有しているポジションにも影響します。売値が下がれば買いポジションの含み損益が悪化し、買値が上がれば売りポジションが悪化します。損切りが近いポジションは、これで損切りにかかることもあります。

固定スプレッドと変動スプレッド

口座のスプレッドは大きく2種類に分かれます:

  • 変動スプレッド:市場の気配値に合わせて変わり、指標発表時や閑散時間帯には大きく広がることがあります。
  • 固定スプレッド:プラットフォームが事前に決めた数字で、通常は相場によって変わりません。ただし「固定」でもどんな状況でも変わらないわけではなく、急変時の扱いはプラットフォームの規約によります。

自分の口座がどちらかは、商品の仕様を見ればわかります(MT5での確認方法は後述)。

スプレッドが損切り幅を食う:損切りを5ポイントにしたら

前回の〈損切りはどう設定する?〉で、損切り幅は価格の通常の揺れより大きくしないと振り落とされると説明しました。ここでもうひとつ補足します:スプレッドも損切り幅を食っています。

同じ例で続けます。買値 1002 で買い、損切りを5ポイント、つまり 997 に置きます。

MT5では、買いポジションの損切りと利確は売値で発動します。現在の売値は 1000 なので、997 まで残り3ポイントしかありません:

エントリー(買値):1002
損切り:997(エントリー価格から5ポイント)
現在の売値:1000 → 損切りまで残り3ポイント

5ポイントの損切り幅のうち、2ポイントは買いボタンを押した瞬間に使われています。スプレッドだけで、損切り幅の4割を食っているのです。価格が3ポイント軽く揺れるだけで、損切りにかかります。

ノートの手描きイラスト:0から5ポイントの定規で、左端がエントリー、右端が損切り、最初の2ポイントがスプレッドとして塗られている。下に「スプレッド2ポイント ÷ 損切り5ポイント = 4割」「価格が軽く揺れるだけで決済される」と書かれている

損切り幅が小さいほど、スプレッドの占める割合は大きくなります(説明用の整数。スプレッドはすべて2ポイント):

損切り幅 損切り幅に占めるスプレッド 売値が下がれる余地
5ポイント 40% 3ポイント
20ポイント 10% 18ポイント
50ポイント 4% 48ポイント

利益目標も同じです。利確をエントリー価格の10ポイント上(1012)に置くと、利確も売値で判定されます。売値が 1000 から 1012 まで動く必要があり、相場が12ポイント動いて、ようやく口座上で10ポイントの利益になります。

スプレッドは利益と損失を非対称にします。5ポイント損するには価格が逆方向に3ポイント動けば足りますが、10ポイント稼ぐには順方向に12ポイント動く必要があります。

どのくらいの割合なら大きすぎるかに正解はなく、あなたの取引スタイルによります。大事なのは、決済後に気づくのではなく、発注前に比べておくことです。

売りポジションは要注意:チャートでは届いていないのに損切りされる

MT5では、多くのFXやCFD商品のローソク足は売値で描かれます。しかし売りポジションは買値で決済され、損切りも買値で発動します。

そのため、スプレッドが急に広がると、チャートのローソク足は損切りラインからまだ離れているのに、買値がすでに届いていて、売りポジションが損切りされる、ということが起こりえます。チャート上で買値を見たいときは、Askラインを表示しましょう(方法は次の節)。

売買の回数が多いほど、スプレッドを多く払う

スプレッドは1回の取引(エントリーと決済で1往復)ごとに1回払います。1日に10回売買すれば、10回払うことになります(説明用の整数):

1回2ポイント × 10回 = 20ポイント

この20ポイントは、方向が当たっても外れても支払います。金額に換算する式は:

スプレッドコスト = スプレッド(ポイント)× 1ポイントの価値 × ロット数

1ポイントがいくらになるかは、第2回〈ロット数はどう計算する?〉で解説しました(そこでは「1目盛りの価値」と呼びました)。ロット数が大きいほど、同じスプレッドでも金額は大きくなります。

売買が頻繁で、損切り幅や利益目標が小さい取引スタイルほど、スプレッドの比重は大きくなります。短期売買がダメだというわけではなく、コスト計算からスプレッドを抜いてはいけないということです。

発注前に、MT5でスプレッドを確認する

  1. 気配値表示を開く(Market Watch、ショートカット Ctrl+M):各商品に Bid(売値)と Ask(買値)の2つの価格が表示されます。
  2. スプレッド列を表示する:気配値表示で右クリックし、列(Columns)から Spread にチェックを入れると、スプレッドの列が追加されます。
  3. 仕様を確認する:同じ右クリックメニューから仕様(Specification)を選ぶと、スプレッドが変動(floating)か固定の数字か、スワップ(Swap)の計算方法も確認できます。
  4. チャートに買値を表示する:チャートのプロパティ(F8)の Show タブで Show Ask price line にチェックを入れると、チャートに買値のラインが表示されます。

Spread 列の単位に注意してください。これはその商品の気配値の最小変動単位(point)で、普段言う「ポイント」と同じとは限りません。たとえばFXでよく言う 1 pip は、小数点以下5桁まで表示される通貨ペアでは10 pointに当たります。ゴールドや株価指数などの「1ポイント」の考え方はプラットフォームごとに仕様が異なります。第1回〈1ロットはいくら?〉で述べたとおり、まず商品の仕様を確認しましょう。

数字を確認したら、損切り幅や利益目標と比べてみましょう。

よくある間違い

一、エントリー直後のマイナスを見て買い間違いだと思い、慌てて決済する

最初のマイナスはスプレッドであり、相場が逆に動いたわけではありません。ここで決済すると、スプレッドというコストを確定させるだけです。そのポジションを持ち続けるかどうかは、エントリーの根拠がまだ有効かどうかで判断すべきで、最初に見えたマイナス記号で判断するものではありません。

二、指標発表の前後にいつもどおり発注し、現在のスプレッドを確認しない

損切り幅は普段のスプレッドを前提に考えたものです。スプレッドが一気に数倍に広がれば、元の損切り幅では足りなくなっているかもしれません。

よくある質問

スプレッドとは何ですか?

すべての気配値には2つの価格があります。買うときに使う買値(Ask)と、売るときに使う売値(Bid)です。買値は売値より高く、その差がスプレッドです。すべての取引で支払うコストで、エントリーした瞬間に発生します。

なぜ買った瞬間に損益がマイナスになるのですか?

買いポジションは買値でエントリーしますが、決済は低いほうの売値で行います。プラットフォームは通常、現在の売値で含み損益を計算するため、価格がまったく動いていなくても、最初からスプレッド分だけマイナスになります。売りポジションはその逆で、売値でエントリーして買値で決済するため、同じく最初からマイナスです。

スプレッドはエントリー時と決済時にそれぞれかかるのですか?

いいえ。エントリー時と決済時のスプレッドが同じなら、1往復でスプレッド1回分です。買いポジションは買値で入り売値で出るので、その往復全体の価格差がスプレッドです。エントリー直後にマイナス表示になるのは、プラットフォームがすでに「今決済したら受け取れる価格」で計算しているからです。決済時にスプレッドが広がっていれば、その取引のコストもそれだけ大きくなります。

スプレッドと取引手数料、スワップポイントはどう違いますか?

スプレッドは買値と売値に含まれ、すべての取引で発生します。取引手数料は一部の口座タイプで別途かかる費用で、通常は取引ロット数または取引金額で計算されます。スワップポイントはポジションを日をまたいで保有したときにのみ発生し、商品と方向によって支払いの場合も受け取りの場合もあります。実際の費用はプラットフォーム、商品、口座タイプによって異なります。

スプレッドはなぜ急に広がるのですか?

重要な経済指標の発表前後、取引が閑散な時間帯、取引開始・終了や毎日の決済・日付変更の前後によく起こります。こうした時間帯は相場が不透明で提示される量も少なく、買値と売値が離れやすいため、スプレッドが一気に数倍に広がることがあります。

MT5でスプレッドを確認するには?

気配値表示(Market Watch、Ctrl+M)を開くと、各商品の Bid(売値)と Ask(買値)が表示されます。右クリックして列から Spread にチェックを入れると、スプレッドを直接確認できます。この列の単位はその商品の気配値の最小変動単位(point)で、普段言う「ポイント」と同じとは限りません。

まとめ

第1回は「まず仕様を見る」、第2回は「まずロット数を計算する」、第3回は「証拠金は損切りではない」、第4回は「損切りは判断が外れた場所に置く」でした。今回扱ったのは、発注ボタンを押した瞬間に起こること:スプレッドです。

スプレッドはすべての取引で支払うコストです。エントリー直後にマイナスなのは普通です。注意すべきは、それが損切り幅や利益目標のどれだけを占めるか、そして1日に何回払っているかです。

エントリー直後のマイナスは普通のこと。スプレッドが割に合わないほど広いときは、エントリーしないのもひとつの選択です。

リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。実際のスプレッド、取引手数料、スワップポイントはプラットフォーム、商品、口座タイプによって異なり、市場の状況に応じて変動します。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。

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