移動平均線(SMA)とは?移動平均線がいつも一歩遅れる理由
「価格が移動平均線を上抜けたら買い、下抜けたら売り」——これはおそらく、最も多くの人が最初に学ぶトレードのルールでしょう。
移動平均線の便利さは本物です。上下する価格をならして、方向をひと目でわかるようにしてくれます。しかし、どうしても避けられない性格がひとつあります。移動平均線は必ず価格より遅い。この記事ではまず5つの数字で一度計算し、次に 1234 の番号を付けた実際のチャート(ビットコイン、2021年)で、「どれだけ遅いか、なぜ遅いか、遅さをどう使うか」をはっきりさせます。
この記事は MASQuant の「トレーディングアカデミー・テクニカル指標大全」シリーズの1本です。すべての指標の分類はテクニカル指標大全にまとめています。
ひと言でいうと
移動平均線(SMA)=直近N本のローソク足の終値の平均。
答えてくれる問いは「最近の一定期間、価格はだいたいどの水準にあり、どちらの方向に進んでいるか?」です。
「直近20日間の平均気温」だと考えてみてください。今日急に寒くなっても、平均気温はすぐには下がりません。それより前の暖かかった19日分がまだ計算に含まれているからです。寒い日が何日も続いて、ようやく平均がはっきり下がります。移動平均線が価格を見るのも同じです。安定しているが、必ず遅れる。
まず計算してみる:5つの数字でわかる
ここでは5本の移動平均線 SMA(5) で計算します(説明用の整数であり、相場データではありません)。文中の「1本」はローソク足1本のことです。日足なら1本は1日、1時間足なら1本は1時間です。
直近8本の終値が順に 10、11、12、13、14、20、15、14 だったとします。
| 何本目 | 終値 | 平均に入る5本 | SMA(5) |
|---|---|---|---|
| 5本目 | 14 | 10、11、12、13、14 | 12 |
| 6本目 | 20 | 11、12、13、14、20 | 14 |
| 7本目 | 15 | 12、13、14、20、15 | 14.8 |
| 8本目 | 14 | 13、14、20、15、14 | 15.2 |
2つの点を見てください。
- 6本目、価格は一気に20まで跳ねたのに、移動平均線は14まで。ほかの4本の古い価格がまだ含まれていて、平均を下に引っ張っています。
- 7本目と8本目、価格はすでに20から15、14へ下がったのに、移動平均線はまだ上がり続けている(14 → 14.8 → 15.2)。新しい1本が来るたびに外れるのは、もっと古くて低い11、12です。あの20はまだ平均の中に残っていて、外れるのはさらに数本後です。
これが「移動平均線は一歩遅れる」理由のすべてです。価格はもう反転しているのに、移動平均線は古い価格を1本ずつ入れ替えてからでないと追いつけない。期間が長いほど(たとえば60本)、入れ替える古い価格が多くなり、それだけ遅くなります。
正式な計算式
SMA(N) = 直近N本の終値の合計 ÷ N
新しいローソク足が1本来るたびに、いちばん古い1本を外し、最新の1本を加えるので、「移動」平均と呼ばれます。よく使われる期間は5、10、20、60、120、200です。日足では20日線がおよそ1か月、60日線がおよそ四半期にあたります。MT5では移動平均線は標準搭載の Moving Average で、メソッドに Simple を選ぶと SMA になります。
チャートで見る:ビットコイン2021年の高値、1234 の順に
下のチャートは、ビットコイン(BTCUSD)の2021年6月から2022年1月までの日足で、MT5の過去の価格データから取ったものです。この値動きを覚えている人は多いでしょう。夏は3万ドル台でレンジ、その後11月の史上最高値付近まで上がり続け、また3万ドル台まで下がりました。

レンジでは、移動平均線は方向を示せない。6月から7月中旬まで、ビットコインの終値は32,162から39,880の間を行ったり来たりし、20日線は価格に合わせて上下に揺れるだけで、方向は読み取れません。このとき「上抜けたら買い、下抜けたら売り」をすると、買っては売り、往復で損を重ねるだけです。
11月9日、終値の最高値67,643。7月中旬の31,674から上がり続け、113.6%上昇しました。この時点で2本の移動平均線はどちらもまだ上を向いていることに注意してください。上の例の7本目、8本目と同じで、天井がすでについたことをまだ知らないのです。
終値で20日線を下抜け:高値から5本目(11月16日)。終値は60,400で、すでに高値から10.7%下落していました。20日線そのものが下向きに転じたのは高値から4本目です。
終値で60日線を下抜け:高値から13本目(11月26日)。終値は54,126で、すでに20%下落していました。60日線そのものはさらに遅く、下向きに転じたのは高値から34本目(12月27日)です。
20日線は4本遅れて反転し、60日線は34本遅れました。期間が長いほど、入れ替える古い価格が多く、それだけ遅くなる。逆に言えば、期間の長い線ほどなめらかで、レンジのときに価格に何度も突き抜けられることが少なくなります。安定と遅さは、同じものの表と裏です。(その後ビットコインは2022年1月24日の36,721まで下がり続けました。)
これは実際の過去の値動きで、移動平均線の性格を説明するためのものであり、一般法則ではありません。銘柄、時間足、期間を変えれば、数字はすべて変わります。
見えるもの・意味すること
| 見えるもの | ふつう意味すること | ただし注意 |
|---|---|---|
| 移動平均線が上向きで、価格がおおむね線の上にある | 最近は買い優勢 | 移動平均線は遅れるので、天井はもうついているかもしれない(チャートの 2 のように) |
| 移動平均線が下向きで、価格がおおむね線の下にある | 最近は売り優勢 | 底も同じく数本遅れてから確認される |
| 移動平均線が横ばいで、価格が線の上下を行き来する | レンジで、方向がない | このときの「上抜け・下抜け」はほとんどがダマシ(チャートの 1 のように) |
| 終値が移動平均線を下抜ける | 短期的に弱くなったというひとつの見方 | 下抜けたときには、価格はたいてい高値からかなり離れている(チャートの 34 のように) |
| 短期線が長期線を上抜ける(ゴールデンクロス) | 短期と中期の方向がそろい始める | 2本とも横ばいのときのクロスは、意味がとても小さい |
実際の使い方:3つの例
例1:「方向フィルター」として
価格が60日線より上にあり、しかも60日線が上向きのときだけ、買いのチャンスを探します。移動平均線はどの足でエントリーするかは教えてくれません。役目は「大きな方向に逆らう」注文をふるい落とすことだけです。
例2:「決済ライン」として
買ったあと、終値で20日線を下抜けたら決済します。ルールがはっきりしていて迷わずに済むのが利点で、代償はチャートの 3 のように、最高値より数本遅れて利益の一部を吐き出すことです。60日線に替えると振り落とされる回数は減りますが、吐き出す分は増えます(チャートの 4)。
例3:期間は保有期間に合わせる
数日保有するつもりのトレードに200日線を合わせると、シグナルが遅すぎて意味がなくなります。数か月保有するつもりのトレードに5日線を合わせると、小さな値動きのたびに振り落とされます。期間はおおむね保有期間と同じスケールにすべきです。なお「移動平均線を下抜けたら決済」は、それ自体がひとつの損切りです。ただ、置かれている位置は移動平均線であって、自分の判断が間違っていたとわかる位置とは限りません。両者の考え方は損切りはどう設定する?をご覧ください。
よくある誤用
1. 移動平均線をサポートやレジスタンスの「壁」として扱う
移動平均線は過去の価格の平均であって、誰かがそこに置いている注文ではありません。価格が移動平均線に触れて反発するのは、多くの人が同じ線を見ているせいのこともあれば、ただの偶然のこともあります。触れたあとそのまま突き抜けることも多いのです。
2. 期間を何度も替えて「いちばん当たる」線を探す
同じ値動きで18日、23日、37日と繰り返し試せば、過去でいちばんきれいに見える線は必ず見つかります。しかしそれは、たまたまその期間にぴったり合っただけの可能性が高く、別の期間では通用しません。ほとんどのトレード戦略が失敗するのはなぜか?をご覧ください。
3. クロスだけを見て、線の向きを見ない
短期線が長期線をクロスする(ゴールデンクロス、デッドクロス)のは、レンジでは何度も起こります。2本とも横ばいのときに出たクロスは、2本とも同じ方向を向いているときに比べて、意味がはるかに小さいのです。
よくある質問
移動平均線とは何ですか?
移動平均線は、直近一定期間の終値を平均して描いた線で、新しいローソク足が1本来るたびに計算し直します。最も一般的なのは単純移動平均(SMA)で、直近N本の終値の合計をNで割ったものです。たとえば5本の終値が 10、11、12、13、14 なら、SMA(5) は12です。
移動平均線はなぜ遅れるのですか?
移動平均線のどの点にも、過去N本の価格が含まれているからです。価格の向きが変わっても古い価格がまだ平均の中に残っていて、それが少しずつ新しい価格に置き換わってから、ようやく移動平均線も向きを変えます。期間が長いほど置き換える古い価格が多く、遅れも大きくなります。
SMAとEMAの違いは何ですか?
SMAでは1本1本の価格のウェイトがすべて同じです。EMA(指数平滑移動平均)は直近の価格に大きなウェイトを与えるので、向きを変えるのは速いですが、短期の値動きにも振り回されやすくなります。詳しくはEMA(指数平滑移動平均)をご覧ください。
20日線、60日線、200日線はどう選べばいいですか?
決まった答えはありません。期間が短いほど敏感でノイズが多く、長いほどなめらかで遅くなります。よくあるやり方は、期間を保有期間と同じスケールにしたうえで、バックテストで異なる期間があなたの銘柄でどう機能するかを比べることです。
MT5で移動平均線を追加するには?
MT5には Moving Average 指標が標準搭載されています。設定のメソッドで Simple を選ぶと SMA、Exponential を選ぶと EMA になり、期間は Period 欄で調整します。
まとめ
移動平均線の遅さは本物で、その安定も本物です。60日線で振り落とされずに済んだ数回と、60日線で余分に吐き出した数%は、同じ選択の表と裏です。
ですから問うべきは「どの移動平均線がいちばん当たるか」ではなく、あなたの銘柄では、どれくらい遅い移動平均線がいちばん割に合うか?です。この問いには、ひとつの過去の値動きでは答えられません。当社のAIストラテジーアシスタントでバックテストすればわかります。
条件を1つの文にまとめて、たとえば「終値で20日線を上抜けたらエントリー、下抜けたら決済」として、MASQuant のAIストラテジーアシスタントに渡し、ボタンを押せばバックテストが始まります。バックテスト環境にはスプレッド、スリッページ、市場流動性の変化、執行遅延といった実際の市場の摩擦が含まれています(使い方はAIストラテジーアシスタントの使い方をご覧ください)。さらに20を60に替えてもう一度実行すれば、2種類の「遅さ」があなたの銘柄でどう違うかを比べられます。バックテストが教えてくれるのは「このルールが過去の相場でどうだったか」であり、将来の保証ではありません。
アイデアは、検証されて初めて戦略になる。
本文のチャートはMT5プラットフォームの過去の価格データ(日足。プラットフォームによって価格や日足の区切り方が少し異なるため、数値が完全に一致しない場合があります)から取り、指標はプログラムで標準的な計算方法に従って算出しています。例に使った整数は相場データではありません。過去の値動きは指標の性格を説明するためだけに使っており、将来の値動きを示すものではありません。
リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。



