ADX指標とは?ADXが高ければ買うべき?測るのは強さだけで、方向は測らない

「ADXが40まで上がった、トレンドは強い、そろそろ買いでしょう?」

この言葉は一か所で間違っています。ADXが測るのはトレンドの強さだけで、トレンドの方向は測りません。大きな上昇でもADXは上がり、大きな下落でも上がります。この記事ではまず3組の数字で一度計算します。上昇と下落で計算結果がまったく同じになるのがわかるはずです。次に 1〜5 の番号を付けた実際のチャート(ユーロ/ドル、2017〜2018年)で、ADXがなぜいつも一歩遅れるのかを見ます。

この記事は MASQuant の「トレーディングアカデミー・テクニカル指標大全」シリーズの1本です。すべての指標の分類はテクニカル指標大全にまとめています。

ひと言でいうと

ADX=トレンドの「強度計」。数字が大きいほど、最近の値動きがトレンドらしいということ。

答えてくれる問いは「今はトレンドがあるのか、それともレンジか?」です。「上か下か」には答えません。

ADXは車のスピードメーターのようなものです。どれだけ速く走っているかは教えてくれますが、北に向かっているのか南に向かっているのかは教えてくれません。北へ時速80kmで走ればメーターは80、南へ時速80kmで走ってもやはり80です。方向はもう2本の線、+DIと−DIで見ます。こちらがコンパスです。

まず計算してみる:上昇でも下落でも同じ数字

ADXは3本の線でできています。まず平たく言うと:

  • +DI:最近の一定期間、価格が前の足の高値を上に抜けた力の強さ。
  • −DI:最近の一定期間、価格が前の足の安値を下に割った力の強さ。
  • ADX:+DIと−DIがどれだけ離れているか。

第1ステップ。ローソク足1本ごとに「上にどれだけ多く進んだか、下にどれだけ多く進んだか」を見ます(以下は説明用の整数であり、相場データではありません)。今日の高値が105、前日の高値が102なら、上に3多く進んだことになります。今日の安値が99、前日の安値が100なら、下に1多く進んだことになります。上のほうが大きいので、この1本は「上3、下0」と記録します。直近14本をこのように記録して平均すると、+DIと−DIが得られます。

第2ステップ。+DIと−DIがどれだけ離れているかを見ます。この数字をDXと呼びます。

状況 +DI −DI DX = 両者の差 ÷ 両者の和 × 100
はっきりした上昇 30 10 20 ÷ 40 × 100 = 50
はっきりした下落 10 30 20 ÷ 40 × 100 = 50
レンジで、両方がほぼ同じ 22 18 4 ÷ 40 × 100 = 10

ポイントはここです。「差」は絶対値をとるので、どちらが大きいかは関係ありません。上昇でも下落でも計算結果は50。両者が拮抗しているレンジのときだけ、数字が低くなります。

第3ステップ。ADXはDXをもう一度平滑化したものです(「平滑化」とは、直近14個の数字を平均して線がガタガタしないようにすることだと考えてください)。+DIと−DIはすでに一度平滑化されていて、ADXはさらにもう一度平滑化されます。2回平滑化するので、ADXは遅いのです。

正式な計算式

よく使われるパラメーターは14です。

1 ローソク足1本ごとに:
   +DM = 今日の高値 − 前日の高値(下向きの幅より大きく、かつ0より大きいときだけ数える。それ以外は0)
   −DM = 前日の安値 − 今日の安値(上向きの幅より大きく、かつ0より大きいときだけ数える。それ以外は0)
   TR  = 真の値幅(ATRと同じ計算方法)

2 +DM、−DM、TRをそれぞれ14期間で平滑化:
   +DI = 平滑化した+DM ÷ 平滑化したTR × 100
   −DI = 平滑化した−DM ÷ 平滑化したTR × 100

3 DX  = |+DI − −DI|÷(+DI + −DI)× 100
   ADX = DXの14期間平滑化

ADXは J. Welles Wilder Jr. が1978年に発表したもので、RSIやATRと同じ本に収められています。よくある見方は、ADXが20未満ならレンジ寄り、25超ならトレンド寄りというものです。これは慣習的な参考ラインにすぎず、厳密な境界ではありません。

MT5には2種類のADXがあります。Average Directional Movement Index と ADX Wilder です。後者はWilder本来の平滑化方法を使っていて、この記事のチャートもこちらを使っています。前者は別の平滑化方法を使うため、描かれる数値が異なります。プラットフォームをまたいで数値を比べる前に、どちらを使っているかを確認しましょう。

チャートで見る:ユーロ2017〜2018年、1〜5 の順に

下のチャートは、ユーロ/ドル(EURUSD)の2017年8月から2018年5月までの日足で、MT5の過去の価格データから取ったものです。レンジ、上昇、レンジ、下落の順に進みました。2017年11月から2018年1月にかけて1.158から1.241まで上昇し、2018年4月から5月にかけて1.230から1.169まで下落しています。

ユーロ/ドルの2017年8月から2018年5月までの日足。下段のADXは上昇の後に51.3、下落中に42.2まで上がり、レンジでは20未満に下がるが、いつも一歩遅れる
図:ユーロ/ドル(EURUSD)日足、2017/8/23〜2018/5/23、MT5の過去の価格データ。上段は価格で、白抜きのローソク足は陽線、塗りつぶしは陰線。グレーの背景がレンジ、薄いオレンジの背景がトレンド。下段のオレンジの太線がADX(14)、緑の線が+DI、紫の線が−DI。赤の破線が25、グレーの破線が20。右が価格、下が日付で、丸数字は下の説明に対応しています。
1

上昇の始まり(2017年11月7日)。価格がレンジを抜けて上に向かいます。このときADXは17.3で、まだ反応していません。

2

ADXが25を上回る:上昇開始から41本目(2018年1月5日)。上昇全体はわずか55本なので、ADXが「トレンドがある」と確認したときには、値動きの大半がすでに終わっていました。方向は実はもっと早くDIに表れていました。上昇の途中、+DI(緑)は最長で29本連続して−DI(紫)の上にありました。

3

ADXの高値51.3:上昇はすでに8本前に終わっていた(2018年2月5日)。価格はすでにレンジに入っていたのに、ADXはまだ上がり続けていました。これが2回平滑化する代償です。ADXが語るのは「過去の一定期間が全体としてトレンドらしかったか」であり、「今のこの1本」ではありません。

4

ADXがやっと25を下回る:レンジ開始から26本目(3月2日)。レンジが26本続いてから、ADXはようやく「トレンドはなくなった」と認めました。2つのレンジの最後の30本では、ADXの平均はそれぞれ16と19.4で、レンジの水準に戻っています。

5

下落の区間で、ADXは42.2まで上がり、なお上昇中。3 と同じく高い水準です。ADXだけを見ても、どの区間が上昇でどの区間が下落かは区別できません。方向はDIで見ます。下落の区間では、−DIが最長で24本連続して+DIの上にありました。下落開始時のADXはわずか13.5で、やはり25を上回るまでに23本かかっています。

これは実際の過去の値動きで、ADXの性格を説明するためのものであり、一般法則ではありません。銘柄、時間足、期間を変えれば、数字はすべて変わります。

見えるもの・意味すること

見えるもの ふつう意味すること ただし注意
ADXが20未満で横ばい レンジで、はっきりしたトレンドがない トレンドフォローの手法(移動平均線、ブレイクアウト)がいちばん振り落とされやすいとき
ADXが低い所から25を上回る トレンドが形成されつつある 25を上回るときには、価格はたいていすでにかなり動いている(チャートの 2 のように)
ADXがとても高い、たとえば40以上 トレンドがとても強い 上がっているという意味ではない。大きな下落でも同じように高い(チャートの 3 と 5)
ADXが高値から下がる トレンドが減速している 反転とは限らず、ひと休みしているだけかもしれない
+DIが−DIの上 買い優勢 ADXがとても低いときは、どちらのDIが上かにあまり意味はない
−DIが+DIの上 売り優勢 同上

実際の使い方:3つの例

例1:「相場環境フィルター」として

これがADXのいちばんよくある使い方です。ルールは「ADXが25超のときだけ移動平均線やブレイクアウトの手法でエントリーし、ADXが20未満ならトレンドフォローの注文は出さない」と書けます。ADXは売買を決めるのではなく、「今はトレンドフォローの手法が合うかどうか」だけを決めます。

例2:方向はDIに任せる

ADXが「トレンドがある」と言ったら、どちらに仕掛けるかはDIで見ます。+DIが−DIの上なら買いだけ、逆なら売りだけ。たとえば「ADXが25超で、しかも+DIが−DIの上のときだけ買う」というルールです。

例3:すぐに反転する指標をレンジから守る

パラボリックSARのように「常に市場に入っていて、触れたら反転する」指標は、レンジで何度も振り落とされます。「ADXが20未満のときは反転を無視する」を加えれば、往復をかなり減らせます。SARの性格はパラボリックSARとは?をご覧ください。

3つの例はどれも同じことを受け入れる必要があります。ADXは遅い。25を上回るのを待ってエントリーすると、トレンドはたいていすでにかなり進んでいます。下がるのを待って決済すると、たいていすでにかなり吐き出しています。エントリーと決済の目覚まし時計としてより、背景の天気予報として使うほうが向いています。

よくある誤用

1. ADXが高いから買う

チャートでは上昇がADXを51.3まで押し上げ、下落が42.2まで押し上げてなお上昇中でした。どちらも高い水準です。ADXが高いというのは「トレンドがある」ということだけで、大きな上昇かもしれないし、大きな下落かもしれません。

2. ADXが高値から下がったら、トレンドは終わったと思う

ADXが下がるというのは、+DIと−DIの差が縮まっているということにすぎません。トレンドがひと休みしている、減速しているだけかもしれず、反転とは限りません。価格はまだ同じ方向にゆっくり進んでいるかもしれません。

3. 25を絶対のラインとして扱う

20、25、30はどれもよく使われる参考ラインにすぎません。銘柄や時間足によってADXの水準は違うので、1本の固定ラインをすべての銘柄に当てはめると、簡単にずれてしまいます。

よくある質問

ADX指標とは何ですか?

ADX(平均方向性指数)はWilderが考案したトレンドの強さを測る指標で、値は0から100、よく使われるパラメーターは14です。最近のトレンドがどれだけ強いかを測り、上昇か下落かは区別しません。方向は+DIと−DIと組み合わせて判断します。

ADXがいくつならトレンドがあるといえますか?

よくある見方は、25超ならトレンド寄り、20未満ならレンジ寄りというものです。これは参考ラインにすぎず、銘柄によって水準が違うので、自分の銘柄で観察したりバックテストしたりするのがいちばんです。

ADXで上昇か下落かを判断できますか?

できません。ADXは上昇でも下落でも上がります。+DI 30・−DI 10 でも、+DI 10・−DI 30 でも、計算されるDXはどちらも50です。方向を判断するには、+DIと−DIのどちらが上かを見ます。

ADXとDMIの関係は?

DMI(方向性指数)は+DIと−DIの組の線のことで、ADXはそこから計算されます。多くのチャートソフトでは、3本の線を1つの指標にまとめています。

まとめ

ADXは正直です。「今トレンドがあるかどうか」を教えてくれて、それはたいてい正しい。ただ、言うのが遅いだけです。どちらに向かうかは決して教えてくれません。それは+DIと−DIの仕事です。

ですから本当に問うべきは、あなたのトレンドフォロー戦略にADXのフィルターを加えたとき、減ったダマシは、その数本の遅れに見合うか?です。この問いには、ひとつの過去の値動きでは答えられません。当社のAIストラテジーアシスタントでバックテストすればわかります。

条件を1つの文にまとめて、たとえば「ADXが25超で、しかも+DIが−DIの上のときだけ買う」として、MASQuant のAIストラテジーアシスタントに渡し、ボタンを押せばバックテストが始まります。バックテスト環境にはスプレッド、スリッページ、市場流動性の変化、執行遅延といった実際の市場の摩擦が含まれています(使い方はAIストラテジーアシスタントの使い方をご覧ください)。さらにADXの条件を外してもう一度実行すれば、フィルターが実際にどれだけ役立ったかがわかります。バックテストが教えてくれるのは「このルールが過去の相場でどうだったか」であり、将来の保証ではありません。

アイデアは、検証されて初めて戦略になる。

本文のチャートはMT5プラットフォームの過去の価格データ(日足。プラットフォームによって価格や日足の区切り方が少し異なるため、数値が完全に一致しない場合があります)から取り、指標はプログラムで標準的な計算方法に従って算出しています。例に使った整数は相場データではありません。過去の値動きは指標の性格を説明するためだけに使っており、将来の値動きを示すものではありません。

リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。

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