MACDダイバージェンスは必ず反転するのか?ダイバージェンスは手がかりであって、判決ではない

価格は高値を更新したのに、MACDはついてこない。これをダイバージェンスと呼びます。

多くの解説は続けてこう言います。反転が近い、売る準備をしよう、と。

本当でしょうか?

これは MASQuant「トレーディングアカデミー・指標の真実」の第3回です。今回はMACDの計算方法から始め、説明用の相場を使って、ダイバージェンスが鳴った後に価格が実際にどう動くのかを見ていきます。

結論から

ダイバージェンスは手がかりであって、判決ではない。
勢いが弱まることは、すぐに反転することを意味しない。

MACDとは:2本の移動平均線の距離

MACD(Moving Average Convergence Divergence、移動平均収束拡散法)は、1970年代後半にジェラルド・アペルが考案しました。名前は長いですが、測っているものはシンプルです。2本の指数移動平均線(EMA)の距離で、1本は速く、1本は遅い線です。

(名前の Divergence は2本の移動平均線が「離れる」ことを指しており、今回扱う「価格と指標のダイバージェンス」とは別のものです。)

EMAは通常の移動平均線と違い、直近の価格ほど重みが大きいため、向きを変えるのが速くなります。

EMA = 今日の終値 × α + 前日のEMA ×(1 − α)
α = 2 ÷(N + 1) 例:N = 12 のとき α ≈ 0.154

MACDの最も一般的な初期設定は (12, 26, 9) で、3つのものを描きます:

DIF = EMA12 − EMA26 ← 速い線と遅い線の距離
シグナル線 = DIFの9期間EMA ← DIF自身の平均
ヒストグラム = DIF − シグナル線 ← 距離が自分の平均とどれだけ離れているか

平たく言えば:

  • DIFがゼロラインより上なら、短期の移動平均線が長期の移動平均線の上にあるということです。DIFが大きいほど、2本の線は大きく離れています。
  • ヒストグラムがゼロラインより上なら、DIFがシグナル線の上にあるということです。ヒストグラムがマイナスからプラスに転じるのは、DIFがシグナル線を下から上へ抜けたとき、いわゆるゴールデンクロスです。

同じ3つのもの、3通りの呼び方

MACDでつまずきやすいのは、計算方法よりも名前であることが多いのです。同じ3つのものでも、英語、台湾のチャートソフト、簡体字中国語のソフトで呼び方が違い、しかも「MACD」の4文字が指す線もそれぞれ違います:

計算方法 本記事での呼び方 英語でよく使う名前 台湾のチャートソフトでよく使う名前 簡体字中国語のソフトでよく使う名前
EMA12 − EMA26 DIF MACD line DIF(差離値) DIF
DIFの9期間EMA シグナル線 Signal line MACD DEA
DIF − シグナル線 ヒストグラム Histogram OSC MACD(棒)

ですから、誰かが「MACDがプラス転換」「MACDダイバージェンス」と言ったら、まずどの線のことかを確認しましょう。本記事でいう「MACDダイバージェンス」は、ヒストグラムのダイバージェンスを指します。なお、日本のチャートソフトでは一般に DIF を「MACD」、シグナル線を「シグナル」と表示します。

また、ソフトによって描き方が違うこともあります。ヒストグラム(DIF − シグナル線)をさらに2倍して描くソフトもあり、同じ相場でも棒の高さは違いますが、高くなるか低くなるかの方向は同じです。呼び方も描き方も各社で完全には統一されていないので、使っているソフトの凡例に従ってください。

ヒストグラムが測っているもの:上げ下げではなく「加速」

これがダイバージェンスを読み解く鍵です。

ヒストグラム = DIF − シグナル線で、シグナル線はDIFの直近の平均です。つまりヒストグラムが答えているのは、2本の移動平均線の距離が、今、自分自身の直近の平均よりどれだけ大きいかという問いです。

  • トレンドが加速している:距離がどんどん速く開き、今の距離が平均を大きく引き離すので、ヒストグラムは高くなります。
  • 加速が鈍っている:距離の開き方が遅くなる、あるいはもう開かなくなると、平均(シグナル線)が追いついてきて、ヒストグラムは短くなります。
ノートの手描きイラスト:速い指数移動平均線と遅い指数移動平均線。2本の距離が開くと下のヒストグラムが高くなり、距離の開き方が鈍るとヒストグラムが短くなり始める

2つ目のケースに注意してください。ヒストグラムが短くなっているとき、価格はまだ上がっているかもしれません。

極端な例を挙げます。価格が一定の速さで上がり続けると、速いEMAと遅いEMAの距離は最終的に一定の値で止まります。DIFは横ばいになり、シグナル線が追いつき、ヒストグラムは徐々にゼロ近くまで縮みます。価格はローソク足1本も下がっていないのに、ヒストグラムはほとんど消えてしまうのです。

ですから「ヒストグラムが短くなるのは勢いが弱まっている証拠」という言い方は、より正確には加速が鈍っているということです。車はまだ前に進んでいて、ただ加速しなくなっただけです。

MACDダイバージェンスとは:弱気と強気のダイバージェンス

ダイバージェンス(divergence)とは、価格と指標の方向が食い違うことです:

価格 MACDヒストグラム 一般的な解釈
弱気のダイバージェンス(高値圏) 高値更新 山が前の波より低い 上昇の勢いが弱まっている
強気のダイバージェンス(安値圏) 安値更新 谷が前の波より浅い 下落の勢いが弱まっている

読み取る前に、はっきりさせておくべきことが3つあります:

  1. 比べるのは対応する2つの波です。 今回の波の価格の高値付近にあるヒストグラムの山と、前の波の高値付近の山を比べます。適当に2本の棒を選ぶのではありません。
  2. ヒストグラムを見るかDIFを見るかで、結果は同じとは限りません。 ヒストグラムの山を見る人もいれば、DIF線の高値を見る人もいます。ヒストグラムはDIFより反応が速く、上下動も多いので、2つの見方で捉えるダイバージェンスは同じとは限りません。まずどちらを見るかを決め、同じ基準で読み取りましょう。
  3. ダイバージェンスは波が終わってからでないとわかりません。 棒が短くなり始めて初めて前の棒が山だったとわかり、価格が下がって初めてそれがこの波の高値だったとわかります。チャートにきれいに引かれたダイバージェンスの線は、たいてい後から引いたものです。

説明用の相場:警報は3回鳴った

図の相場を見てみましょう。これはプログラムで計算した説明用の相場であり、実在の商品の値動きではありません。MACDは (12, 26, 9) で実際に計算しています。

価格は4つの波で上昇し、波ごとに高値を更新します。しかし下のヒストグラムの山は、波ごとに低くなっていきます:

波 価格 ヒストグラムの山 ダイバージェンス
第1波 上昇開始 2.72 —
第2波 高値更新 0.92 1回目
第3波 さらに高値更新 0.59 2回目
第4波 さらに高値更新 0.27 3回目
第4波の後 ようやく本当に下落
ノートの手描きイラスト:価格は4つの波で波ごとに高くなるが、下のMACDヒストグラムの山は波ごとに低くなり(2.72、0.92、0.59、0.27)、ダイバージェンス1、2、3と記されている。第4波の後にようやく価格が下落する

(図のヒストグラムは「2倍」で描いています。MACDの数値は価格の単位と結びついているため、商品やソフトが違えば数字をそのまま比べることはできません。ここでは相対的な高さだけを見ます。第2波の棒は第1波の約3分の1、第4波は約10分の1しかありません。)

第1波では、ヒストグラムは高くて力強い。第2波では、価格は高値を更新したのに、ヒストグラムはぐっと低くなりました。これがダイバージェンスです。教科書どおりなら、警報が鳴った、売る準備をすべきだ、となります。

あなたなら、売りますか?

続きを見てみましょう。第3波でさらに高値を更新し、ヒストグラムはさらに低く、第4波でまた高値を更新し、ヒストグラムはほとんどなくなりました。

警報は3回鳴ったのに、価格は上がり続けた。

最初のダイバージェンスで売った人は、その後の2回の高値更新を取り逃がしました。売るだけでなく売りに転じて、損切りを前の高値の上に置いていたなら、次の高値更新で損切りにかかった可能性もあります。

第4波の後になって、ようやく価格は本当に下がりました。ダイバージェンスは最後には当たったのです。ただ、それが何回目になるかは誰にもわからなかった。

図にはもうひとつ細かい点があります。3回のダイバージェンスのとき、DIFはいずれもまだゼロラインより上にありました。つまり短期の移動平均線はずっと長期の移動平均線の上にあったということです。ヒストグラムは縮んでいても、トレンド自体は下向きに転じていませんでした。

なぜ強いトレンドでは、ダイバージェンスが何度も現れるのか?

ヒストグラムが測っているのは加速であって、方向ではないからです。

強いトレンドの後半では、こんな形になることがあります。波ごとに高値は更新するが、上昇幅は波ごとに小さくなる。図がまさにそうです。価格はまだ上がっていますが、上がる速さが増さなくなったので、ヒストグラムは自然と波ごとに低くなります。

加速が鈍った後、価格は次のように動く可能性があります:

  • 反転して下がる;
  • しばらく横ばいで調整してから、また進む;
  • より遅いペースで、元の方向に進み続ける。

MACD自体には、この3つを区別できません。「上がる速さが落ちた」ということを、ひと目でわかる棒として描いているだけです。

では、ダイバージェンスは何の役に立つのか?

手がかりです。トレンドがもう加速していないことを教えてくれ、価格そのものに弱まりの証拠が出ていないか注意し始めるきっかけになります。

ダイバージェンスを「注意し始める」サインとして扱い、価格構造の変化、たとえば前の波の安値割れを待ってから、トレンドが変わったと判断するトレーダーもいます。そのほうが遅くなり、正しいという保証もありませんが、少なくともひとつの指標だけで判決を下すことにはなりません。

よくある誤用

一、ダイバージェンスを反転シグナルとして扱い、出たらすぐにポジションを逆にする

ダイバージェンスが表すのは勢いであって、方向ではありません。図では、最初のダイバージェンスで売りに転じた人は、その後2回の高値更新に直面することになりました。

二、ダイバージェンスを根拠にしながら、「判断が外れる点」を決めていない

ダイバージェンスをエントリーや決済の根拠にするなら、同じように答える必要があります。価格がどこまで行ったら、この判断は間違いだったとわかるのか? 弱気のダイバージェンスで売る場合なら、価格がさらに高値を更新すれば、「反転が近い」という判断は少なくとも今のところ間違っていたことになります。

この位置を考えておかないと、ダイバージェンスが3回続けて鳴ったとき、ひたすら耐えるしかなくなります。損切りの位置の決め方は〈損切りはどう設定する?いくら損できるかではなく、どこで判断が外れたか〉を参考にしてください。

三、線や時間足やパラメータを変えて、ダイバージェンスが見えるまで探す

ヒストグラムにダイバージェンスがなければDIFを見る、日足になければ1時間足に変える、それでもなければパラメータを調整する。こうすればいつかはダイバージェンスが見つかります。しかしそれは、先に結論があって、それを支持するチャートを探しているだけです。

(12, 26, 9) は最も一般的な初期設定です。パラメータを変えれば、ダイバージェンスが出る位置や回数も変わります。パラメータが合っているかどうかはデータで検証すべきで、見たいものがチャートにちょうど出るまで調整するものではありません。パラメータと戦略の結果の関係については、〈なぜ多くの取引戦略は失敗するのか?問題はテクニカル指標ではなくパラメータかもしれない〉もあわせてご覧ください。

よくある質問

MACDダイバージェンスとは何ですか?

価格が高値を更新したのに、MACDヒストグラムの山が前の波より低いのが弱気のダイバージェンス、価格が安値を更新したのに、ヒストグラムの谷が前の波より浅いのが強気のダイバージェンスです。トレンドの勢いが弱まっていること、より正確には「加速が鈍っている」ことを表しますが、価格がすぐに反転するという意味ではありません。

MACDダイバージェンスが出たら、必ず反転しますか?

必ずではありません。強いトレンドでは、ダイバージェンスが何度も続けて現れても、価格は高値を更新し続けることがあります。本記事の図でも、3回続けてダイバージェンスが出たときは価格は上がり続け、第4波の後になってようやく本当に下落しました。ダイバージェンスは手がかりであって、判決ではありません。

MACDのDIF、シグナル線、ヒストグラムとはそれぞれ何ですか?

一般的な (12, 26, 9) の設定では、DIFは12期間EMAから26期間EMAを引いたもの(英語では MACD line、日本のチャートソフトでは一般に「MACD」と表示)、シグナル線はDIFの9期間EMA、ヒストグラムはDIFからシグナル線を引いたものです。台湾のチャートソフトでは「MACD」がシグナル線、ヒストグラムが「OSC」と呼ばれることが多く、簡体字中国語のソフトではシグナル線を「DEA」、ヒストグラムを「MACD」と呼ぶことが多いので、解説を読むときはどの線を指しているかをまず確認しましょう。

MACDダイバージェンスは、ヒストグラムとDIFのどちらで見るべきですか?

どちらも使われており、結果は同じとは限りません。ヒストグラムは反応が速く上下動も多く、DIF線はより滑らかです。大事なのは、事前にどちらを使うかを決め、同じ基準で読み取ることで、ダイバージェンスが出ているほうを見ることではありません。

MACDのパラメータは必ず12、26、9でなければいけませんか?

必ずではありません。(12, 26, 9) は最も一般的な初期設定にすぎません。パラメータを変えればダイバージェンスが出る位置や回数も変わります。あなたの商品や時間足に合うかどうかは、過去データでバックテストして検証すべきで、見たいダイバージェンスがチャートにちょうど出るまで調整するものではありません。

まとめ

MACDダイバージェンスで最もよくある誤解は、「勢いが弱まる」を「すぐに反転する」と読んでしまうことです。

ヒストグラムが短くなるのは、加速が鈍っているということです。その後、価格は反転するかもしれませんし、少し休んでからまた進むかもしれません。図では、警報が3回鳴ってようやく価格が下向きに転じました。そしてチャートの右端に立っている時点では、今が何回目なのかは誰にもわかりません。

ですから「ダイバージェンスは当たるのか」と問うより、もっと具体的に問いましょう。あなたの商品では、ダイバージェンスの後どれくらいで転じるのか?ダイバージェンスはどれくらいの頻度で機能するのか? 当社のAIストラテジーアシスタントでバックテストすればわかります。

頭の中にあるダイバージェンスのルールを1つの文にまとめ、たとえば「ヒストグラムの山が前の波より低く、かつ価格が前の波の安値を割ったら決済する」といった形で MASQuant のAIストラテジーアシスタントに入れれば、バックテストを始められます。バックテスト環境には、スプレッド、スリッページ、市場流動性の変化、執行遅延といった実際の市場の摩擦が含まれています。結果はあなたの考えを支持するかもしれませんし、覆すかもしれません。そしてバックテストが答えるのは「過去の相場で何が起きたか」であって、将来も同じになることを保証するものではありません。判断をルールとして書き、データで検証することこそ、クオンツ取引の出発点です。

ダイバージェンスは手がかりであって、判決ではない。
アイデアは、検証されて初めて戦略になる。

リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。

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