スーパートレンドとは?ATRで距離を取るから反転は減る、でも決済は遅れる

「スーパートレンドはSARより使いやすい。そんなに振り落とされないから。」

これは本当ですが、半分しか語っていません。スーパートレンドはパラボリックSARと同じく、反転する追跡型の損切りラインです。違いはATRで価格との間に距離を取るので、小さな揺れでは届かないことです。距離が広がれば振り落とされにくくなりますが、同じ距離のせいで、トレンドが本当に転換したときの決済も遅れます。この記事ではまずローソク足3本で一度計算し、次に 1〜4 の番号を付けた実際のチャート(ゴールド、2024年)で、SARと同じ区間に並べて比べます。

この記事は MASQuant の「トレーディングアカデミー・テクニカル指標大全」シリーズの1本です。すべての指標の分類はテクニカル指標大全にまとめています。

ひと言でいうと

スーパートレンド=価格から「ATRの3倍」の距離を保ち、トレンドの方向にしか動かず、終値で割られたら反転する損切りライン。

SARと同じ問い、「トレンドに乗って持つなら、損切りはどこに置くべきか?」に答えます。ただ、損切りを置く位置が遠いだけです。

前の車と安全な車間距離を取るようなものです。前の車(価格)が少しふらついても後ろの車には届かず、道が荒れるほど(ATRが大きいほど)車間は自動的に広がります。その代わり、前の車が本当にUターンしたとき、後ろの車が反応するまでに少し時間がかかります。ATRは「ローソク足1本がふだんどのくらい動くか」で、計算方法はATRとは?をご覧ください。

まず計算してみる:3本のローソク足でわかる

よく使われる設定はATR期間10、倍数3です。以下ではATRが1.5のまま変わらないと仮定するので、距離は3×1.5=4.5です(以下は説明のために作った数字で、相場データではありません)。買いのとき、スーパートレンドは「中心線から4.5下」のラインです:

いつ 高値/安値 中心線=(高値+安値)÷2 この足の下限=中心線−4.5 スーパートレンド
1本目 106/104 105 100.5 100.5
2本目 107/105 106 101.5 101.5(高くなったので上へ)
3本目 105/103 104 99.5 101.5(低くなったが、下には戻れない)

ポイントは3本目です。価格が押し、計算上の下限は99.5まで下がりますが、スーパートレンドは下に戻ることが許されず、101.5のままです。これが「追跡型の損切り」の意味です。上がれば一緒に引き上げ、押しでは動きません。終値が101.5を割って初めて売りに反転し、中心線から4.5上の上限に切り替わって、上から追いかけていきます。

SARと比べると、SARは追うほど速く迫り、最後は価格のすぐそばまで来ます。スーパートレンドは常にATRの3倍の距離を保ちます。だから小さな押しでは届きませんが、トレンドが本当に転換したときは、価格がまずその距離を走り切らないと反転しません。

正式な計算式

中心線 =(高値+安値)÷ 2
上限 = 中心線 + 3 × ATR(10)
下限 = 中心線 − 3 × ATR(10)
買いのとき:スーパートレンド = 下限。上にしか動かず、下には戻らない
終値が割り込む → 売りに反転し、上限を使う(下にしか動かない)

スーパートレンドはMT5の標準搭載指標ではなく、カスタムインジケーターを入れる必要があります。TradingViewなどのチャートプラットフォームには標準で入っています。バージョンによってATRの計算方法や初期設定が少し違うことがあるので、比べる前に確認しましょう。

チャートで見る:ゴールドの2024年、SARと比べる、1〜4 の順に

下のチャートはパラボリックSARの記事と同じ区間です:ゴールド(XAUUSD)日足、2023年11月〜2024年6月、MT5の過去の価格データから取っています。比べやすいように、SARも灰色の小さな点で描いています。

ゴールド日足 2023年11月〜2024年6月にスーパートレンドとパラボリックSARを重ねたチャート。レンジではスーパートレンドが3回、SARが7回反転。天井の後、SARは3本目、スーパートレンドは14本目に売りへ反転
図:ゴールド(XAUUSD)日足、2023/11/2〜2024/6/12、MT5の過去の価格データ。白抜きのローソク足は陽線、塗りつぶしは陰線。グレーの背景がレンジ、薄いオレンジの背景がトレンド。緑の線は価格の下にあるスーパートレンド(買い優勢)、赤の線は価格の上にあるスーパートレンド(売り優勢)、灰色の小さな点は同じ区間のパラボリックSARです。黒の破線は終値の最高値、赤の破線はスーパートレンドが売りに反転した位置です。右が価格、下が日付で、丸数字は下の説明に対応しています。
1

レンジ:スーパートレンドは3回しか反転していません。同じレンジで、灰色のSARは7回反転しています。チャート全体では、スーパートレンドが5回、SARが12回です。反転のたびに損切りと逆方向への乗り換えが起きるので、反転が少なければ、そのぶん往復のスプレッドと小さな損切りが節約できます。

2

5月20日、終値の最高値2,426。ここから天井を付けて下げ始めます。

3

SARが売りに反転:高値から3本目(5月23日)。このとき価格は高値から4.0%下げています。SARは近くにいるので、押すとすぐに触れます。

4

スーパートレンドが売りに反転:高値から14本目(6月7日)。このとき価格はすでに高値から5.5%下げています。SARより11本遅く、1.5ポイント多く利益を吐き出しました。

1と4は同じ距離の表と裏です。レンジでは、距離のおかげで小さな揺れに触れません。転換時には、同じ距離のせいで確認が何本も遅れます。

これは実際の過去の値動きの一区間で、スーパートレンドの性格を説明するためのものであり、一般的な法則ではありません。銘柄、時間足、区間が変われば、数字はすべて変わります。

見えるもの・意味すること

見えるもの ふつうの意味 ただし注意
緑の線が価格の下で、一段ずつ上がる 上昇中で、損切りも引き上げられている 価格との間にATRの3倍の距離があり、決済時にはその距離分を吐き出す
押しても緑の線が動かない 正常:損切りは上にしか動かず、下には戻らない 押しが深くて触れれば、売りに反転する
赤の線に反転 終値が損切りを割り、売り優勢に転じた このとき価格はふつう、すでに高値からかなり離れている(チャートの 4)
レンジでほとんど反転しない 距離が十分遠く、小さな揺れが届かない(チャートの 1) 少ないだけで、ゼロではない

実際の使い方:3つの例

例1:振り落とされるのと、利益を吐き出すのと、どちらが怖い?

レンジで何度も逆を突かれるのが怖いなら、スーパートレンドがSARより向いています(チャートの 1)。トレンドの終わりで利益を吐き出しすぎるのが怖いなら、SARか小さい倍数が向いています(チャートでは 3 が 4 より先)。トレードオフであり、どちらが常に優れているわけではありません。

例2:決済だけに使う

SARと同じく、スーパートレンドを追跡型の損切りとしてだけ使い、エントリーは別の条件に任せる人も多くいます。そうすればレンジで一緒に行ったり来たりせずに済みます。例:「終値がスーパートレンドの上にある間は持ち続け、割り込んだら決済」。

例3:倍数を調整する

倍数が大きいほど距離は広く、反転は少なく、決済は遅くなります。小さいほど価格に密着します。上の例でいえば、倍数3なら距離は4.5、2なら3です。よく使われる10と3は出発点にすぎず、あなたの銘柄に合う値は検証が必要です。

よくある誤用

1. 振り落とされないと思い込む

スーパートレンドは振り落とされにくいだけで、振り落とされないわけではありません。チャート左側のレンジでも3回反転しています。

2. 振り落とされないように倍数をとても大きくする

倍数が大きいほど、トレンド転換時に吐き出す利益も増えます。極端にすると、トレンドが反転してだいぶ経ってから決済することになりかねません。

3. プラットフォームをまたいでそのまま比べる

スーパートレンドはMT5の標準搭載指標ではなく、実装ごとに書き方が違い、ATRの平滑化方法も異なることがあります。プラットフォームを替える前に、設定と数値を照合しましょう。

よくある質問

スーパートレンド指標とは?

スーパートレンドは、ATRを距離として使う追跡型の損切りラインです。価格がラインの上にあれば買い優勢、終値がラインを割れば売り優勢に反転します。よく使われる初期設定はATR期間10、倍数3で、価格の中心線からATRの3倍離れた位置を保ちます。

スーパートレンドとパラボリックSAR、どちらが良い?

スーパートレンドは反転が少なく、レンジで振り落とされにくい一方、トレンド転換時の決済は遅れます。SARは密着して追うので決済は早い一方、レンジでは反転が多くなります。どちらが良いかは、あなたの銘柄と、どちらの失敗をより恐れるかによります。

スーパートレンドの設定は?

よく使われる初期設定は10と3です。倍数が大きいほど反転しにくく、決済は遅くなり、小さいほど価格に密着します。いくつかの設定があなたの銘柄でどうだったかを、バックテストで比べるのが一番です。

MT5にスーパートレンドはありますか?

MT5にはスーパートレンドが標準搭載されておらず、カスタムインジケーターを入れる必要があります。

まとめ

スーパートレンドが振り落とされにくいのは本当です。同じ区間でスーパートレンドは5回、SARは12回反転しました。遅いのも本当です。天井の後、SARより11本遅く、1.5ポイント多く吐き出しました。どちらも同じ距離から来ています。

ですから本当に問うべきは、あなたの銘柄では、反転が減って節約できた分で、決済が遅れて余計に吐き出した分をまかなえるか?です。この問いには、ひとつの過去の値動きでは答えられません。当社のAIストラテジーアシスタントでバックテストすればわかります。

条件を1つの文にまとめて、たとえば「終値がスーパートレンドの上にある間は買いを保有し、割り込んだら決済」として、MASQuant のAIストラテジーアシスタントに渡し、ボタンを押せばバックテストが始まります。バックテスト環境にはスプレッド、スリッページ、市場流動性の変化、執行遅延といった実際の市場の摩擦が含まれています(使い方はAIストラテジーアシスタントの使い方をご覧ください)。さらに倍数を3から2に変えてもう一度実行すれば、距離のコストが見えてきます。バックテストが教えてくれるのは「このルールが過去の相場でどうだったか」であり、将来の保証ではありません。

アイデアは、検証されて初めて戦略になる。

本文のチャートはMT5プラットフォームの過去の価格データ(日足。プラットフォームによって価格や日足の区切り方が少し異なるため、数値が完全に一致しない場合があります)から取り、指標はプログラムで標準的な計算方法に従って算出しています。例に使った整数は相場データではありません。過去の値動きは指標の性格を説明するためだけに使っており、将来の値動きを示すものではありません。

リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。

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