A/Dライン(アキュムレーション・ディストリビューション)とは?価格が上がったのに、A/Dが下がるのはなぜ

「今日は上がって引けて、OBVも上向き。なのにA/Dはなぜ下がっているの?誰かが売り抜けているの?」

売り抜けとは限りません。2つの指標が見ているものが違うのです。OBVは今日が前日より上がったか下がったかを見ます。A/Dは終値が今日の高値と安値の範囲のどこにあるかだけを見ます。上がって引けても当日の安値圏で引ければ、OBVは加点、A/Dは減点です。この記事ではまずローソク足3本で一度計算し、次に 1〜3 の番号を付けた実際のチャート(金、2020年1月)で、同じローソク足で2つの指標が逆方向に動く様子を見ます。

この記事は MASQuant の「トレーディングアカデミー・テクニカル指標大全」シリーズの1本です。すべての指標の分類はテクニカル指標大全にまとめています。

ひと言でいうと

A/D=毎日、「当日のどこで引けたか」に応じて出来高を配分し、それを累計していったもの。

当日の高値で引ければ、その足の出来高はすべて買い方のもの。安値で引ければすべて売り方のもの。ちょうど真ん中で引ければ、足しも引きもしません。

A/Dは、期末テストの順位だけを見る先生のようなものです。前の学期からどれだけ伸びたかは関係なく、今回のテストでクラスの上位にいるか下位にいるかだけを見ます。OBVが見るのは「前日と比べてどうか」、A/Dが見るのは「今日の値幅の中でどこにいるか」。たいていは両者の向きは同じですが、ときどき正反対になります。

まず計算してみる:上がって引けても減点になる

A/Dはまず、CLVという位置のスコアを計算します。(終値 − 安値)から(高値 − 終値)を引き、(高値 − 安値)で割ります。高値で引ければ+1、安値で引ければ−1、ちょうど真ん中なら0です。1本ごとのA/Dの増減=CLV × 出来高。下の3本のローソク足は、高値と安値がどれも110と100、出来高はどれも1,000です(以下は説明用の整数であり、相場データではありません)。

状況 終値 CLV A/Dの増減
高値圏で引ける 109 (9 − 1)÷ 10 = +0.8 +800
真ん中で引ける 105 (5 − 5)÷ 10 = 0 0
安値圏で引ける 102 (2 − 8)÷ 10 = −0.6 −600

3本目に注目してください。前日の終値が101なら、今日の102は上昇で、OBVはその足の1,000をまるごと足します。しかし当日の110〜100の範囲の安値圏で引けているので、A/Dは600を引きます。A/Dは前日の終値をまったく見ません。だから窓(ギャップ)も数に入りません。寄り付きで5%下に窓を開けても、当日の高値で引ければ、A/Dは強いと数えます。

正式な計算式

1 CLV =〔(終値 − 安値)−(高値 − 終値)〕÷(高値 − 安値)
   (高値 = 安値のときは0とする)
2 今日のA/D = 前日のA/D + CLV × 出来高

A/Dは Marc Chaikin が考案したもので、同じCLVはチャイキン・マネーフロー(CMF)にも使われています(CMF(チャイキン・マネーフロー)とは?をご覧ください)。A/Dは累計していく線なので、数値そのものに意味はなく、見るのは方向だけです。どの日から足し始めるかで、値は変わります。

MT5には Accumulation/Distribution が標準搭載されていて、出来高はデフォルトでティックボリュームを使います。

CFDでは特に注意が必要です。CFDの多くには集中した取引所がなく、MT5で使えるのはたいていティックボリューム(Tick Volume)、つまりその期間に価格が何回更新されたかであって、実際にどれだけ約定したかではありません。市場の活発さの近似としてよく使われますが、相場の変動、価格の配信元、取引時間帯の影響を受け、同じ銘柄でもプラットフォームによって計算される値が違うことがあります。

チャートで見る:金2020年1月、1〜3 の順に

下のチャートは、金(XAUUSD)の2019年11月から2020年2月中旬までの日足で、MT5の過去の価格データから取ったものです。全体では1,468から1,581へ7.7%上昇しました。赤の破線は2020年1月6日です。下の3段は順に、ティックボリューム、A/D、OBVで、2本の線はどちらもチャートの初日から累計しています。

金の2019年11月から2020年2月までの日足。2020年1月6日は0.88%上がって引けたが、当日の安値圏で引けたため、A/Dは下がり、OBVは上がった
図:金(XAUUSD)日足、2019/11/7〜2020/2/17、MT5の過去の価格データ。上段は価格で、白抜きのローソク足は陽線、塗りつぶしは陰線。赤の破線は2020年1月6日。下の3段は順に、ティックボリューム(赤い棒が1月6日)、A/D(オレンジの線)、OBV(紫の線)で、A/DとOBVはどちらもチャートの初日から累計しています。右が価格、下が日付で、丸数字は下の説明に対応しています。
1

0.88%上がって引けたが、当日の安値圏で引けた(2020年1月6日)。前日の終値は1,551.86。この日は1,559.66で寄り付き、ザラ場で高値1,586.80まで上げ、安値は1,559.54、最終的に1,565.48で引けました。前日より高いものの、当日の高値からは大きく離れていて、CLVは−0.56。この日のティックボリュームは、直近20日の中央値の2倍でした。

2

A/Dは下向き:45,340の減少。CLV −0.56 に当日の出来高を掛けると、A/Dはこの日を売り方優勢と数えます。

3

同じ日、OBVは上向き:80,362の増加。OBVは終値が前日より高いことだけを見て、その日の出来高80,362をまるごと足します。同じローソク足なのに、一方は買い方の勝ち、もう一方は売り方の勝ちと言っています。

長い目で見ると、2本の線の向きは実は同じです。期間全体で金は7.7%上昇し、A/Dは289,461、OBVは552,738増えています。1日だけの食い違いはよくあることで、「今日どこで引けたか」と「今日は前日と比べてどうか」の違いを表しているだけです。誰かがこっそり売り抜けているとは限りません。

これは実際の過去の値動きで、A/Dの性格を説明するためのものであり、一般法則ではありません。銘柄、時間足、期間を変えれば、数字はすべて変わります。

見えるもの・意味すること

見えるもの ふつう意味すること ただし注意
A/Dが価格と一緒に上がる 多くの日が当日の高値圏で引けている 見るのは方向だけで、数値の大きさに意味はない
価格は上、A/Dは下 上がった日がよく当日の安値圏で引けている 数日だけの食い違いかもしれない(チャートの 1 2)
A/DとOBVが逆方向 終値の位置と終値の上げ下げが一致していない もともと両者が見ているものが違う(チャートの 2 3)
窓を開けて大きく下げたのに、A/Dは上 当日の高値圏で引けた A/Dは窓を見ないので、下げた分は数えていない
A/Dが急に大きく動く その日の出来高が特に多い CFDでは価格の更新が多かったということで、資金が多かったとは限らない

実際の使い方:3つの例

例1:長めのダイバージェンスを見る

価格が高値を更新しているのに、A/Dは何週間も高値を更新していない。上昇した日がますます当日の安値圏で引けるようになっているということです。1日だけの食い違いより意味がありますが、それでも手がかりにすぎません。ダイバージェンスは長く続くことがあります。

例2:ブレイクアウトに確認を1つ加える

ルールは「価格が20本の高値を上抜け、しかもA/Dも20本の高値付近にあるときだけ買う」と書けます。ブレイクアウトした数日の多くが、当日の高値圏で引けているという意味です。

例3:OBVと一緒に見る

OBVは「前日と比べて」、A/Dは「今日のどこで」。両方が上向きなら、終値が上がり続け、しかも高値圏で引けているということ。両者が逆を向いたら、その数本のローソク足を見てください。たいていは長い上ヒゲか窓が原因です。

3つの例のどれでも覚えておきたいのは、A/Dが見るのは当日の値幅の中での終値の位置だけということです。前日にいくらで引けたかも、今日窓を開けたかどうかも、A/Dは知りません。

よくある誤用

1. A/Dが下がっただけで「大口が売り抜けている」と言う

チャートの 1 の日、金は0.88%上がって引けたのに、A/Dは45,340減りました。終値が当日の高値から遠かったというだけの理由です。長い目で見れば、期間全体でA/DもOBVも上向きでした。

2. A/Dの数値の大小を比べる

A/Dはある日から累計していく線なので、起点を変えると線全体が上下に平行移動します。見られるのは方向とダイバージェンスだけで、「A/Dが30万に達した」と言っても何の意味もありません。

3. A/Dは窓を見ないことを忘れる

寄り付きで大きく下に窓を開け、当日の高値で引けると、A/Dは強いと数えて加点します。下げた分はまったく数えていません。大きな窓が開いた日は、A/Dと価格の向きが逆になりやすいのです。

よくある質問

A/D指標とは何ですか?

A/D(Accumulation/Distribution、アキュムレーション・ディストリビューション)は Marc Chaikin が考案した指標で、当日の高値と安値の範囲の中での終値の位置(CLV)に出来高を掛けて累計し、買い方と売り方のどちらが強いかを見ます。

A/DとOBVの違いは?

OBVは今日の終値が前日より高いか低いかを見て、その日の出来高をまるごと足すか引くかします。A/Dは終値が今日の高値と安値のどこにあるかを見て、位置に応じて出来高の一部を配分し、前日は見ません。

A/Dのダイバージェンスはどう見ますか?

価格が高値を更新してもA/Dがついてこないなら、上昇した日がよく当日の安値圏で引けていて、買いの勢いが弱まっているかもしれないということです。これは手がかりであって反転シグナルではありません。ほかの条件と組み合わせるか、バックテストで確認するのがいちばんです。

MT5にA/Dはありますか?

あります。MT5には Accumulation/Distribution が標準搭載されていて、出来高はデフォルトでティックボリューム(Tick Volume)を使います。

まとめ

A/Dの発想は細やかです。同じ上げて引けた日でも、高値圏で引けたのと安値圏で引けたのでは意味が違う。けれども視野は狭く、今日の1本の値幅しか見ず、前日も窓も気にしません。

ですから本当に問うべきは、あなたの銘柄で、A/Dと価格のダイバージェンスのあと、本当に反転することが多かったのか?です。この問いには、ひとつの過去の値動きでは答えられません。ルールをたくさんの相場でバックテストする必要があります。

まだ自分のルールがなく、指標を1つずつ組み合わせるところから始めたくない? MASQuant のストラテジージーニーなら、まず投資スタイルを1つ選ぶだけで、AIが市況を分析して銘柄を選び、候補の戦略を一度に3つ提示します。どれも過去データでバックテスト済みで、リターンと元本の最大ドローダウンをすべて確認したうえで、MT5に導入するかどうかをあなたが決めます。

すでに自分のアイデアがあるなら、条件を1つの文にまとめて、たとえば「価格が20本の高値を上抜け、しかもA/Dも20本の高値付近にあるときだけ買う」として、AIストラテジーアシスタントに渡し、ボタンを押せばバックテストが始まります。バックテスト環境にはスプレッド、スリッページ、市場流動性の変化、執行遅延といった実際の市場の摩擦が含まれています(使い方はAIストラテジーアシスタントの使い方をご覧ください)。さらにA/Dの条件を外してもう一度実行すれば、A/Dが役立っているかどうかがわかります。バックテストが教えてくれるのは「このルールが過去の相場でどうだったか」であり、将来の保証ではありません。

アイデアは、検証されて初めて戦略になる。

本文のチャートはMT5プラットフォームの過去の価格データ(日足。プラットフォームによって価格や日足の区切り方が少し異なるため、数値が完全に一致しない場合があります)から取り、指標はプログラムで標準的な計算方法に従って算出しています。例に使った整数は相場データではありません。過去の値動きは指標の性格を説明するためだけに使っており、将来の値動きを示すものではありません。

リスク開示:CFDはハイリスクの金融商品であり、急速に資金を失う可能性があります。過去の実績は将来の結果を保証するものではなく、すべての戦略とバックテストは参考情報であり、投資助言ではありません。取引前に当社のリスク開示条項を十分にご確認ください。